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発行人の日記

小説『眠れない』を刊行しました

2014年01月

小説『眠れない』を刊行しました

本書の著者、結城真子さんはかつてリクルートで同僚だった宇賀神真子さんのペンネームです。1988年に第26回文藝賞を受賞(綿矢りささんも第38回に受賞している)しました。あろうことかFaceBookでご縁を得て真子さんの著書の電子出版をまかせてもらうことになりました。まことに、ひと昔前ならありえない、不思議なご縁で、あらためてザッカーバーグ氏のアイデアの素晴らしさに感謝しなければなりません(笑)。
小説『眠れない』は都会で働く若い女性と不眠症の話です。

 

「だからねえ。あなたにはないんだな。脳に、寝るっていう癖が…」

どんな質問も検証済み。そのくせ、説得しようという強い意思をあからさまにしない。O医師の診断は、だから強い。反論しようもなく美咲は薄笑いを浮かべる。とはいえ、まだ戸惑いが残っている。
だが、医者は意にかいさない。微笑みを浮かべ、膝を叩きながら軽やかに続ける。

 

「決して無理しないことだ。あなたの脳味噌は、仕事中毒らしいからね」
美咲は中途半端に笑ったまま、落ち着きなく辺りを見渡す。
「それとね、これはわかって欲しいんだな。毎朝すっきり、目覚めて、頭もびんびん回転するなんていう睡眠は、もう貴重な宝物なの。つまりね、普通じゃないんですよ。人間はコンピュータじゃないんだから。要求の水準が高すぎるのも、歪といえば、歪なんだよ」
O医師は独り言のようにいう。
「それで、睡眠薬が強くなるのは、少しだけですか」
美咲も呟く。医者はカルテを机の脇に押し返すと、力強く頷いて、にこっと笑った。
診察は終わり。 ありがとうございました……。 美咲はよたよたと診察室を出る。

 

もう10年目、眠れなくても、死ぬわけじゃない……。
『眠れない』は、Kindleストアでお求めください。読了後、レビューを書いていただくと嬉しいです。

  

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